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コストリーダーシップ戦略とは?メリット・デメリットや成功事例を解説

コストリーダーシップ戦略とは?メリット・デメリットや成功事例を解説

コストリーダーシップ戦略は、代表的なマーケティング戦略の1つです。しかし、マーケティング初心者の中には「そもそも、コストリーダーシップ戦略とは何か」「どのように進めれば成功できるのか」と疑問に思う方もいるでしょう。

本記事ではコストリーダーシップ戦略の概要を踏まえながら、実施するメリット・デメリットを解説します。コストリーダーシップ戦略を成功させるポイントやBtoBでの成功事例もあわせて解説しています。ぜひ参考にしてみてください。

目次

1.コストリーダーシップ戦略とは?

まずはコストリーダーシップ戦略とは何か、差別化戦略や集中戦略との違いはどこにあるか解説します。コストリーダーシップ戦略の基本を押さえたい方は、1つずつチェックしていきましょう。

低コスト×利益率向上が特徴の戦略

コストリーダーシップ戦略とは製品やサービスの開発コストを削減し、競合他社よりも安い価格で販売しながらも利益率をアップさせる戦略です。

コストリーダーシップ戦略を実現するために大切なのは、生産工程の効率化による稼働率アップだけではありません。製品材料・技術を複数の事業で共有し、企業全体の経営効率を上げることも重要です。

低価格での販売と聞くと、安売りに似ていると感じる方も多いでしょう。しかし、閉店セールなどの安売りは利益を考えず、単に在庫処分を目的としています。低価格で販売する点はコストリーダーシップ戦略と安売りは共通していますが、その目的は大きく異なるのです。

差別化戦略や集中戦略との違い

コストリーダーシップ戦略と並んで紹介されることの多いのが、差別化戦略や集中戦略です。しかしこれらは基本方針や原価などが異なります。

差別化戦略や集中戦略との違い
製品やサービスの基本方針原価販売価格市場規模
コストリーダーシップ戦略低コストで製作・提供する
差別化戦略高い付加価値を付ける
集中戦略ターゲットを特定の顧客に絞る低~高低~高

上記の表を見ると、コストリーダーシップ戦略と差別化戦略は基本方針や販売価格が正反対に思えるでしょう。実際、コストリーダーシップ戦略と差別化戦略は両立が難しいとされてきました。

しかしインターネットの普及により、業界によってはコストリーダーシップ戦略と差別化戦略の両立、つまり2つを組み合わせたハイブリッド戦略として活用できるようになっています。戦略を立てる際はコストリーダーシップ戦略を主軸にするか、それともハイブリッド戦略で進めるか、しっかり見極めたいところです。

2.コストリーダーシップ戦略における3つのメリット

コストリーダーシップ戦略は、低コストながらも利益率向上を目指せる戦略です。そのメリットは、3つあります。

  • シェアの状況に合わせて利益率向上が図れる
  • 製品やサービスの水平展開ができる
  • 外的な脅威に対抗できる

以下それぞれ詳しく見ていきます。

シェアの状況に合わせて利益率向上が図れる

コストリーダーシップ戦略はシェアがまだ少ない状況でも、コスト削減により利益率を追求できます。例えば、原価90円のものを100円で売ると利益率は10%、原価80円に抑えると利益率は20%です。

低価格で販売し続けると、いずれはユーザーに認められてシェアが拡大します。すると、適正価格での販売に移行してもリピーターが残り、さらなる利益率アップが見込まれるのです。

製品やサービスの水平展開ができる

コストリーダーシップ戦略は、製品やサービスの水平展開でも生かせます。材料や技術の共有化により、同一事業内のアイデアだけでは生まれなかったであろう新たな製品やサービスの開発が進むためです。

水平展開によって開発された製品やサービスは新しい顧客層の獲得にもつながる上、関連商品の販促(クロスセル)もできます。コストリーダーシップ戦略によって水平展開が進めば、企業全体の売上アップにもつながりやすくなるでしょう。

外的な脅威に対抗できる

コストリーダーシップ戦略は競合や新規参入者など、外的な脅威に対抗できる点もメリットです。外的な脅威とは、次の5つを指します。

  • 競合の脅威
  • 代替品の脅威
  • 新規参入の脅威
  • 買い手の脅威
  • 売り手の脅威

上記5つは5F(ファイブフォース)とも呼ばれ、マーケティング戦略立案における外部環境の分析で用いられます。それぞれの脅威に対するコストリーダーシップ戦略の対抗策は、次の通りです。


5F コストリーダーシップ戦略での対抗策(例)
競合の脅威
代替品の脅威
新規参入の脅威
他社が実現できないような低価格で競争優位性を確立する
低コストでも利益を生み出す仕組みづくりを進め
買い手の脅威 低価格を維持することで、自社製品やサービスをリピートしてもらう
売り手の脅威 市場への供給量を増やすことで、売り手(仕入先)との力関係の中で自社の立場や仕入れ価格を維持する

外的な脅威にさらされると、利益は下がりやすいものです。しかし、コストリーダーシップ戦略を上手に活用できれば市場で生き残り、利益を上げ続けられる可能性が高まります。

3.コストリーダーシップ戦略における2つのデメリット

コストリーダーシップ戦略はメリットだけでなく、デメリットも存在します。ここでは、コストリーダーシップ戦略のデメリットを2つ見ていきましょう。

  • 激しい価格競争に巻き込まれる
  • ブランドイメージが損なわれる

以下それぞれ詳しく紹介します。激しい価格競争に巻き込まれる

低価格化が中途半端だと、競合他社もコストリーダーシップ戦略を取り始め、激しい価格競争が起きる可能性が出てきます。優位性を保とうと価格を下げ続けると利益が出ないばかりか、利益確保のための値上げができなくなるケースも少なくありません。

また単に模倣品を安く売る、利益が出そうだからと安易に新規参入すると価格競争に負けます。価格競争に負けないコストリーダーシップ戦略を実現するためにも、次のような点は最低限押さえておきましょう。

  • あらかじめ自社の強みや弱みなどを分析する
  • 入念にマーケティング戦略を練る
  • 競合にまねできない独自性を追求する

ブランドイメージが損なわれる

コストリーダーシップ戦略の低価格化は大きな特徴ですが、企業によってはブランドイメージが損なわれる可能性があります。極端な低価格化は「安っぽい」というイメージがついたり、「品質が悪いのでは?」と疑念を抱かれたりしかねません。

特にBtoBの購買行動は、信頼性が重要な判断基準の1つです。見込み顧客が離れていかないよう、コストリーダーシップ戦略を展開する際には過度に低価格化を進めないよう注意しましょう。

4.コストリーダーシップ戦略を成功させる5つのポイント

コストリーダーシップ戦略を成功させるポイントは、次の5つです。製品やサービスを展開する際に分析する、事業展開の流れ(バリューチェーン)に沿って解説します。

  • 調達方法を工夫する
  • 最新あるいは自社独自の技術を生かす
  • 固定費や人件費などの原価を低減する
  • 全体の業務効率を改善する
  • 生産規模を拡大する

以下それぞれ詳しく見ていきます。

バリューチェーン

調達方法を工夫する

コストリーダーシップ戦略を成功させるためには原材料の調達方法を工夫し、原材料費を安く抑えることが大切です。具体的な施策としては、次のようなものが挙げられます。

  • 直接仕入れる
  • 他部署や同法人内の事業と共同で仕入れる
  • 仕入れ先と価格交渉をする
  • 契約に向けた競争入札を設定する
  • より安く仕入れられる代替品を検討する など

最新あるいは自社独自の技術を生かす

最新技術の導入は、バリューチェーンのあらゆる段階で業務効率化などが可能となり、根本的なコスト削減の実現が可能です。

また競合ではまねできない独自技術も、優位性の確立に寄与します。例えば、独自技術の知的財産権を取得すれば、一定期間他社が使用できないようにする施策も実施可能です。特許を取得すれば、のちに技術の販売・収益獲得もできるようになり、さらなる収益アップが見込まれるでしょう。

固定費や人件費などの原価を低減する

水道やガスといった固定費は、利用する設備やリース切り替えなどによる原価低減がおすすめです。例えば電気であればオフィスの照明をLEDに変更する、古い家電は最新のものへ買い替えるだけでも月額料金を抑えられます。

また人件費の削減は、自動化やアウトソーシング(外注)などの活用によって実現できます。業務見直しによる、労務費削減も効果的です。

ただし単に今働いている人の給料を下げる、最低賃金を据え置きにするような対応では従業員の不満がたまります。すると従業員のパフォーマンスが落ち、稼働率アップには逆効果です。

コストリーダーシップ戦略で人件費を削減する際は、今働いてくれている従業員を第一に考えながら、慎重に施策を検討・実施していきましょう。

全体の業務効率を改善する

IT活用や部署間の連携など、業務効率を改善し稼働率アップを図ることもコストリーダーシップ戦略で必要です。

稼働率は従業員の経験値がたまり、業務に慣れることでもアップします。ここで注意したいのが、担当者の退職や異動によって経験者が少なくなり、稼働率が下がることです。

補充された人員もなるべく早く業務に慣れ、効率的に動けるよう、教育体制や引き継ぎ内容などをきちんと整えておきましょう。

生産規模を拡大する

一度に生産する製品・サービスの量が増えると、スケールメリットが働きます。例えば、大量の原材料をまとめて仕入れることで、運送や物流コストの削減が可能です。

コストを削減できれば、安い価格で大量生産をして利益を上げるボリュームディスカウントもできます。利益が見込める市場であれば思い切って生産規模を拡大し、スケールメリットやボリュームディスカウントを狙うのも良いでしょう。

5.【BtoB】コストリーダーシップ戦略の企業例

最後に、コストリーダーシップ戦略が成功したBtoB企業の事例を2つ解説します。

  • ニトリ
  • UQモバイル

ニトリ

ニトリは、「お、ねだん以上」のキャッチフレーズで有名な家具業界の大手企業です。BtoCのイメージが強いニトリですが、実は法人向け取り引きも請け負っています。

ニトリでは、自社内で開発から販売を行うSPA方式という独自モデルや、製造物流小売業という新しい業界を確立しました。そんなニトリでは、次のような場所を中心に、家具や内装などを提案しています。

  • オフィス
  • 病院
  • カフェ
  • 社員寮
  • マンション など

取引先との一体協業体制により品質の維持・向上を図りながら、購入しやすい価格で販売している点がニトリならではといえるでしょう。

UQモバイル

UQモバイルはauのサブブランドであり、格安の通信プランを売りにしています。格安プランは一般消費者だけでなく、法人向け(BtoB)も展開中です。

  • くりこしプランS+5G:1,628円
  • くりこしプランM+5G:2,728円
  • くりこしプランL+5G:3,828円

最も高いプランでも、月額料金が4,000円以下です。。2020年10月以降はauとの一体運営を始め、営業の効率化・技術やサービスの共有化による利益率アップを図っています。

6.まとめ

コストリーダーシップ戦略とは、低コストで製品やサービスを作り、低価格で販売・提供することで利益率を追求する戦略です。

入念なマーケティング分析と戦略立案を経れば、競合との価格競争に強く、シェア率の拡大にもつながります。市場での立場が確固たるものになれば、低価格から脱却し適正価格で販売しても十分収益を得られます。

ただし、コストリーダーシップ戦略を成功させるためには、原価の低減や業務効率化などさまざまな工夫が必要です。

低コストで新製品やサービスの開発を進めたい場合は、コストリーダーシップ戦略を効果的に活用していきましょう。


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BeMARKE編集部
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BeMARKE(ビーマーケ)は、BtoBマーケティングの課題解決メディアです。 BtoBマーケティングのあらゆる局面に新しい気づきを提供し、リアルで使える「ノウハウ」を発信します。

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