インタビュー

「マーケティングは営業組織の一員」The Model型組織で潜在市場の開拓に挑む、Hubbleのマーケ戦略

「マーケティングは営業組織の一員」The Model型組織で潜在市場の開拓に挑む、Hubbleのマーケ戦略

注目のSaaS企業のマーケ戦略を深掘りする連載企画「急成長SaaSのマーケ戦略 大解剖」。今回お話を伺うのは、株式会社Hubble(ハブル)です。2016年4月に創業後、2019年2月に契約書管理クラウドサービス「Hubble」をローンチ。契約業務にまつわるコミュニケーションを集約・可視化することにフォーカスした同サービスは、継続率99.9%を誇るまでに成長しました。

しかし同サービスがターゲットとするのは、リーガルテックの中でも未開拓の市場。潜在顧客に向けて、どのようなマーケティングを行おうとしているのか。マーケティングチームマネージャーの町田健太さんに、これまでの取り組みや今後の展望について、詳しくお聞きします。

目次

潜在的だが本質的な課題を解決したい

株式会社Hubble(ハブル) マーケティングチームマネージャー 町田健太さん
株式会社Hubble(ハブル) マーケティングチームマネージャー 町田健太さん

ーーまず、事業内容について教えてください。

当社は、契約書管理クラウドサービス「Hubble」を開発・提供しています。契約業務のDX支援、いわゆるリーガルテックでは、クラウド上で契約を完結できる電子契約サービスや、AIを活用した契約書レビューサービスなど、契約業務の一部分をピンポイントに効率化するサービスが広く認知されていますが、「Hubble」がDXの対象とするのは契約業務の全体です。

契約業務のプロセスは、契約書の依頼から作成、審査、締結、さらにはその後の管理まで、長期間かつ多岐にわたります。1つの案件について、社内外の多数のステークホルダーがやり取りを行うため、各段階でタイムラグが生じ、進捗状況が把握しづらくなりがちです。

また契約書作成の段階では、それぞれのステークホルダーが修正や提案を行うため、バージョンが重なり最新版が分からない、変更の履歴やその意図が追えないといった「複数の人が介在することによる」イシューもしばしば発生します。

「Hubble」では、契約書の進捗状況やバージョンを管理できるのはもちろん、作成の段階で発生したコミュニケーションを蓄積し、交渉の過程を簡単に遡ることができます。契約書の管理はもちろんのこと、その過程で発生したコミュニケーションの集積と活用にまで踏み込んでいるのは、「Hubble」の強みといえます。

株式会社Hubble(ハブル) マーケティングチームマネージャー 町田健太さん

ーー 一方、他にはない強みを持つからこそ、サービスローンチ時には課題もあったと伺いました。

市場の顕在性ですね。サービスをローンチした当初は、契約書のバージョン管理がメイン。非常に便利なのですが、それ単体でご発注いただけるお客様ばかりというわけではありませんでした。

その後、契約書を一覧で確認できるドキュメントリスト機能や、Slack・クラウドサイン等といった他サービスとの連携機能などを追加し、プロダクトを洗練していった結果、現在はお客様の数も飛躍的に伸びました。

ただし、お客様の要望をそのままプロダクトに反映してきたわけではありません。むしろお客様がまだ気づかれていないような、潜在的かつ本質的な課題を解決するのがベンダーの役割だと考えています。そんな中でHubbleを採用するお客様が増え続けているのは、お客様の根底にある課題をHubbleが解決してきたことの積み上げだと考えています。

しかし、お客様の数が増えたとはいえ、市場はまだまだ成長段階です。どうやって潜在的なお客様にHubbleのバリューを感じていただき、導入していただくか。これは、プロダクトの開発だけでなく、営業やマーケティングにとっても、大きなチャレンジとなっています。

マーケティングを分化し、リード獲得とナーチャリングの基盤を構築

ターニングポイント図

ーーサービスローンチから約2年半後の2021年夏に1人目のマーケティング担当が入社されました。Hubbleの本格的なマーケ活動はここから始まっているのでしょうか?

私も入社前なので詳しくはお話しできないのですが、当社で初めてとなるマーケティング担当を配置したのがこの頃になります。それまでは、セールスサイドのメンバーが見込み層の獲得から商談化まで一気通貫に担っていたのですが、リード獲得に集中する役割ができました。いわゆるThe Model型の営業組織の構築がなされたタイミングといえます。

The Model型の営業組織の構築がなされた

この頃はオンライン展示会への出展に力を入れていました。コロナ禍でなかなかお客様との接点が持てない中、法務系だけでなく、バックオフィス系の展示会にも参加しています。ターゲットを法務部門に限定してしまうとリーチできる層は限られてしまいますが、特に中小企業ではバックオフィス部門が契約業務を主管していたり、システム導入を管轄していたりすることが多いので、その担当者が多く集まる機会に目をつけたようです。結果的に、オンライン展示会の度に多くのリードを獲得することができました。

ーー施策に取り組む中で直面した課題はありましたか?それをどのように乗り越えましたか?

商談化率がなかなか上がらないことが、最も大きなハードルだったようです。確かに接点を持てる方は増えたのですが、それが必ずしもサービスに興味がある方とは限りません。

そこで注力したのがウェビナーです。サービスの特徴や魅力などを紹介するコンテンツを配信することで、お客様の関心を高め、ISがアプローチしやすいSQLを生み出すことを目指しました。

当時のマーケティングメンバーはたった1名。限られたリソースで最大限の効果を生み出すための施策でした。

1. デジタルマーケティングにより、リードの質を向上

ーーそんな中、町田さんが入社されました。その時どのような課題があったのでしょうか?

私が入社する少し前に前任者が退職したため、ゼロからのリスタートとなりました。前任時代に積み上げてきたものを再評価し、止めることは止める、進化させることは進化させるということを、同じく1人マーケとして私が行ったので、ゼロベースからスタートするよりも大変だったように思います。

まず課題として感じたのは商談に繋がるリードが多くないということでした。前任時代からのオンライン展示会の出展で確かにリードボリュームは増えていましたが、リード獲得後、準備にリソースのかかるウェビナーを開催しても、参加する方はあまり多くなく、結果、事業計画に対して十分なSQL、商談を創出することが難しい状態でした。

なのでその改善が、私が入社して最初に行ったことです。

ーー具体的にはどのような施策に変更されたのですか

Turning Point 1【顧客コミュニケーションの改善】

オンライン展示会をあえてリソースの対象から外し、デジタルマーケティングやオフライン展示会、大規模ウェビナーなどへ集中させました。

デジタルマーケティングやオフライン展示会は、オンライン展示会と比較するとCPLは確かに高くなりますが、サービス親和性の高い方が集まってくるため、受注まで見据えたCPAは抑えられると判断しました。

株式会社Hubble(ハブル) マーケティングチームマネージャー 町田健太さん

また、ウェビナーは継続しましたが、コンテンツの内容を見直しました。

サービスに対する解像度や関心度がそれほど高くない方にいきなりサービスの説明をしても刺さらないはず。サービス説明動画はアーカイブとして残し、リアルタイムでの配信はサービスへの親近感を高めてもらうことにフォーカスすべきではないか。そう考え、ウェビナーのコンテンツをサービス概要の説明から導入事例の紹介等に切り替えたのです。

さまざまなユーザー企業様に登壇してもらったウェビナーは好評で、視聴者数は大きく伸びました。サービス説明に割く時間は多少減りはしたものの、お客様の課題に寄り添ったことで、有効なアクティベーション施策になったと考えています。

2. 営業データの可視化により、受注率のシミュレーションが可能に

ーー他にも、営業データの可視化が課題だったと伺いました。

SFAやMAは導入していましたが、きれいに整備はされておらず、リードや商談のきっかけ、営業プロセスの遷移等を追えませんでした。せっかくリードの取り方を変えたにもかかわらず、獲得したリードの良し悪しを見極めることができなかったのです。

SaaSサービス全般で言えるかもしれませんが、お客様は一定の検討期間が必要です。自社の課題を解決してくれるサービスなのか、費用対効果は合っているのかを慎重に検討し、上司や役員の方の決裁もステップを踏んで取得していくことを考えると、リード化から受注までは非常に時間がかかります。だからこそ、流入経路や検討状況は正しく把握しなければなりません。

ーーその課題をどのように解決していったのでしょうか?

Turning Point 2【営業データを可視化】

SFAは既にあったので、シンプルですが、ISやFSに営業データの入力を徹底してもらえるよう何度も働きかけました。

マーケティングの投資はもちろん会社の投資なので、投資対効果の把握の重要性を伝えることや、入力のための時間をどうやったら確保できるかをじっくり話し合うことで、セールスメンバーの理解を得ることができました。この施策によりデータベースが構築でき、マーケティングで獲得したリードが、どの程度の商談につながり、やがて受注に至るのか、各フェーズでの遷移率をシミュレーションできるようになりました。

株式会社Hubble(ハブル) マーケティングチームマネージャー 町田健太さん

3. マーケティングチームを立ち上げ、施策の多角化へ

ーー上記のような施策に取り組む中、マーケティングチームが発足したのですよね。

1名体制では実施できる施策が限られてしまうため、一刻も早く人員を増強したいと考えていました。しかし外部からの採用だとリードタイムが長くなる上に、一からサービスを理解してもらわなければならないため、オンボーディングに時間がかかります。そこで、思い切ってまずは社内からメンバーをスカウトすることにしました。

Turning Point 3【人材リソースの確保】

最初に異動を打診したのは、ISでホワイトペーパーを担当していたメンバーです。そのメンバーが異動し、ナーチャリングにおいて重要なホワイトペーパー施策をマーケティングで巻き取ることによって、リード獲得からSQL化までをマーケティングチームでやり切る体制を整えることができました。また、切り離すことでISにとっても本来の業務に注力できる環境が整うというメリットがありました。

他にも、業務委託として会社に関わっていたデザイナーにも声をかけました。キャリア目標をヒアリングする中で、その方のビジョンとHubbleが目指す方向がマッチしていると感じ、打診。マーケティングチームに正社員として入社してもらうこともできました。

そうして人員を増やしていったことで、作成したホワイトペーパーをウェビナーと連動させたり、LPやメルマガなど広告コンテンツをディレクションしたりなど、さまざまな施策を実行に移すための人的リソースを短期間で確保することができたのです。

そしてその後、並行して行っていた採用活動によりマーケティングやセールスの経験が豊富なメンバーを採用することもでき、マーケティングチームが出来上がってきています。

ーーマーケティングチームとしての強みや成果を教えてください。

1人ひとりが最終的な売上を見据えて施策を評価し、PDCAを回せることが強みです。チームメンバーの多くがマーケターとしてキャリアを歩んできたわけではないため、教科書的なリード獲得数という目先の数値にばかり意識が向かってもおかしくありません。その中で全員が受注売上まで視野に捉えられているのは、「マーケティングは営業組織の一員である」というHubbleのマーケティングチームのビジョンをメンバー1人ひとりが深く理解してくれている証拠だと思います。

Hubbleのマーケティングチーム

マーケティングが売上に対してどう寄与しているか。投資対効果の視点で各施策を判断し、チームで速やかに改善できるようになったのは、ここまでの取り組みの大きな収穫だと考えています。

潜在的なお客様にアプローチできるコミュニケーション設計を目指して

ーーこれまでを振り返って、現状をどのように評価していますか。

マーケティングとして目指す方向性は、常に一貫していると感じますね。営業の一員としてThe Model型組織の構築をリードし、当たり前にプロダクトが売れる状態を作ること。これがマーケティングの至上命題だと考えています。

マーケティング=コミュニケーション✕データ

マーケティングは、コミュニケーションとデータを掛け合わせて常にPDCAを回す必要があります。これまで、チャネル変更やコンテンツ改善によってお客様とのコミュニケーション方法と内容を見直し、セールスとの連携を図ることでデータをより深く集める体制を整備することができました。またそのPDCAを回す人材リソースも確保し、ようやく「コミュニケーション」と「データ」双方の土台が固まってきたと感じます。

ーー今後の目標を教えてください。

株式会社Hubble(ハブル) マーケティングチームマネージャー 町田健太さん

今後は特にコミュニケーション設計や市場分析に着目し、潜在的に「Hubble」を必要としている方にもっとHubbleが届くようなマーケティングを目指します。

「Hubble」は世の中の契約業務のあり方を根本から変え、多くの企業やそこで働く方々の契約業務における働き方を変革できるプロダクトだと、我々は信じています。

まだ本質的に価値に気づけていただけていないお客様にHubbleの魅力を感じていただくためにはどうすればよいのか。日々思いを巡らせながら、施策に取り組んでいきたいと考えています。

ーーありがとうございました!

株式会社Hubble(ハブル) / Hubble,Inc.
事業内容:契約業務における摩擦や無駄な負担をなくし、より効率的なコラボレーションを実現するプロダクトの開発・提供
<提供サービス>
●契約書管理クラウドサービス「Hubble(ハブル)」
https://hubble-docs.com/
●NDAの統一規格化を目指すコンソーシアム型のNDA締結プラットフォーム「OneNDA(ワンエヌディーエー)」
https://one-contract.com/
●法務の生産性を高めるメディア「Legal Ops Lab(リーガルオプスラボ)」
https://hubble-docs.com/legal-ops-lab/
本社所在地:東京都港区港南二丁目15番1号 品川インターシティA棟 22階 SPROUND内
設立年:2016年4月
代表取締役社長:早川 晋平
従業員数:32名(2023年5月現在)
https://hubble-docs.com/about

【取材・執筆:山田奈緒美、編集:BeMARKE編集部】


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BeMARKE編集部
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