インタビュー
2023年7月、ChatGPTに新機能「Code Interpreter(コードインタープリター)※」が追加されました。有料プランユーザーのみが使えるGPT-4のβ版機能として提供されています。データの分析や読み込み、変換などが簡単にできる注目の新機能のBtoBマーケティングでの活用可能性について、株式会社ウィット代表の渥美英紀氏にお聞きしました。
また実際にCode Interpreterを使いデータを用いたデモを行い解説いただきました。
※2023/8/29現在、Code Interpreterは「advanced data analysis」に名称変更しています。
ーーCode Interpreterはどういう機能なのでしょうか。
ChatGPT内でPythonのコードを実行できる機能です。プログラミングの知識がなくとも会話による指示のみで、プログラムに変換しフィードバックしてくれます。これまで以上にChatGPTが便利になりマーケティング現場での活用にも期待ができそうです。
ーー具体的にどういうことができるのでしょうか?
Code Interpreterでは大きく2つのことができるようになりました。
画像データやCSV、音声データなどを読み込ませることができるようになりました。チャット上にデータをアップロードしコードを実行、その結果をダウンロードデータとして出力することも可能です。
この機能によって、これまでデータをテキスト情報に変換してからチャットに入力していた手間が省けそうです。またCSVやExcel形式のデータをそのままアップロードできることでデータ分析に関する活用に期待がもてるでしょう。
データをアップロードしコードを実行させる際に、Pythonに日本語で指示できる点にも注目です。データを用いたグラフ作成や分析、計算をCode Interpreterで実行させる際に、プログラミング言語を知らずとも日本語で指示できるのは画期的です。
動画編集や画像加工も一部可能であることから実務での活用幅はかなり広いといえるでしょう。
マーケティングの現場では大量のデータを用いて分析を行うのが常でそれには一定の工数がかかっていたのが、チャット上で日本語の指示で自由にデータの抽出や分析ができてしまう日も近いのではないかと思います。現状では、ChatGPTが分析しやすいようにある程度データを整形する必要があるものの、今後、操作性が高まればさらに使いやすくなるでしょう。
ーーBtoBマーケティングではどのような業務に活用できそうでしょうか。
BtoBマーケティングではデータを扱う場面が多いためさまざまな業務で活用できると思います。例えば次のような業務での活用が考えられます。
その他にもマーケターはさまざまなデータを扱う機会が多いため、工夫次第で活用幅はいくらでも広がるのではないでしょうか。
現状では文字コードエラーなどが出ることもままありますが、それでもデータ分析の専門家でなくともCode Interpreterを使うことでデータ分析をそれなりに行えるのはすごいと思いますね。
ーー実際にChatGPT Code Interpreterでデータを使いどのようなことができるか見てみましょう。
(1)まず日本の人口統計データをCSV形式で用意します。
(2)ChatGPTのGPT-4でCode Interpreterを選択します。
(3)データアップロードの枠が出てきますので該当データを選択しアップロードします。すぐに読み込みを開始し下図のように分析を加えた回答を出してきました。
(4)データ読み込み後、「人口ピラミッドのグラフを作成できますか?」と投げかけてみます。
(5)すると下図のようにグラフ化し分析をテキストで出してくれました。
ーーデータの形式はCSVが良いのでしょうか。
CSVやExcelなどさまざまな形式のデータの読み込みが可能ですので、特に推奨というわけではありません。データに余計な情報がある場合は読み込みエラーが出る場合もあるようです。今回は読み込みやすいように日本語から英語表記に変えるなどの処理を行っています。
出力したグラフは一部表記に誤りも見られるのですが、期待した形にはなっていると思います。このレベルのグラフが一瞬にして出来上がるというのは同様の業務でも十分活用できるといえるのではないでしょうか。
【実例1】で読み込ませたデータにさらに情報を与え指示を出すとどのようなアウトプットが出るのかを見てみましょう。
(1)【実例1】のチャットに続けて「合計特殊出生率を1.34とした場合、10年後の人口ピラミッドのグラフを作成できますか?」と投げかけてみます。
(2)すると下図のように指示内容を分析しつつ、詳細な人口モデルを作るには出生率、死亡率、人の移動などのデータが必要という回答が出てきました。
(3)そこで「死亡率は0.1、移動はなしとした場合、10年後の人口ピラミッドのグラフを作成できますか?」と条件を追加し投げかけてみます。※ダミーデータを使用しています
(4)グラフ作成中は「Working」と表示されます。どのような処理をしているのか見たい場合は「Show Work」というタブを押してみると下図のようなPythonのコード画面が表示されます。
もし修正したい場合にはこのコードを読むことでエラー箇所にも気づける可能性があります。
(5)処理が終わり下図のような10年後の人口ピラミッドのグラフを出してくれました。
(6)さらに「1つ目のデータと比べて、最も差が大きいところはどこですか?」と聞いてみます。すると下図のように「45歳の年齢層で最も大きな差が生じている」という回答を得られました。
ーーこちらの指示に対して、より詳細なデータ抽出のために必要な条件を要求してくるとは賢いですね。
そうですね。GPT-3.5の場合は情報の正確性に不安がありましたが、データをアップロードすることで回答が慎重になり正確性が上がった印象です。「あくまでこれは簡易モデルである」というような注釈付きの回答もありましたね。
今回のデモではCode Interpreterに、あるデータをアップロードし指示を与えると、グラフ化から比較・抽出を行いそれに対するコメントも出してくるという、データ分析の一連の流れがChatGPTで実現できることが分かったと思います。
後編では、Code Interpreterを使ってマーケティング業務がどこまで効率化できるか見ていきましょう。
後編はこちら>>ChatGPT新機能Code InterpreterでGA4データ分析はできるのか?【実例デモ画面付き】
渥美英紀(あつみ・ひでのり)
株式会社ウィット代表取締役。BtoBのさまざまな業界の売上アップ・ブランド強化・営業改善など450以上のプロジェクトを担当。特にリード獲得や売上アップに高い成功確率を誇る。著書に、自身のノウハウをまとめた「ウェブ営業力」(翔泳社、2009)、 「Webマーケティング基礎講座」(翔泳社、2011)がある。2017年には「BtoBウェブマーケティングの新しい教科書」(翔泳社)を上梓。アクセスログ解析システム、メール配信システムなどの開発も手掛けたことから、ウェブマーケ ティングの遂行に不可欠かつ広範囲な分野について専門性を生かした"総合的"かつ"現場に根差した"ウェブマーケティング支援を得意とする。
ChatGPTを活用したBtoBのウェブマーケティング(株式会社ウィット)
note:ChatGPTを活用したBtoBのウェブマーケティング
BeMARKE編集長。これまで15年以上Webメディア運営・コンテンツ制作に携わる。前職では美容系Webメディア編集長としてサイト規模を2年で28倍の2,800万PVに成長させる。2022年より現職。BeMARKEのコンテンツ編集・制作方針や計画の策定、取材・執筆などを担当。
X(旧Twitter):@maisuzuki_bmk