インタビュー

専門家が語る メールマーケティングの効果を最大化する「顧客データベース」の活用法

専門家が語る メールマーケティングの効果を最大化する「顧客データベース」の活用法

多くのBtoB企業がマーケティング手法として取り入れているメールマーケティング。その成果は企業によって大きな差があります。成否を分けるカギは、顧客データベースとの連携です。

株式会社ラクスが提供するメールマーケティングサービス「配配メール」のパートナーセールス部門の責任者を務める冨樫嘉一氏と、クラウド型業務アプリ開発プラットフォーム「kintone」を提供するサイボウズ株式会社でサイボウズ製品とパートナー製品の連携エコシステムの拡大を担う組織の責任者を務める筆前直輝氏に、顧客データベースとメール配信サービスの連携ノウハウや、現場の担当者が直面する課題と解決策についてうかがいました。

目次

顧客データベースを活用したメールマーケティングの可能性

画像:冨樫嘉一氏(株式会社ラクス ラクスクラウド事業本部 配配メール事業部 営業2課 課長)
冨樫嘉一氏(株式会社ラクス ラクスクラウド事業本部 配配メール事業部 営業2課 課長)

冨樫嘉一氏(以下、冨樫氏) :メールマーケティングの強みは、大勢に対する一斉アプローチから1対1のアプローチまで幅広く対応でき、メールの開封やクリックといった反応から顧客の検討度合いも可視化できることです。

そのため、顧客データベースから熱量が高い顧客にのみアプローチするといった効率的な営業活動が実現します。オウンドメディアやDM、広告に比べて低コストで始められる点もメリットで、専任担当者がいない企業でも手軽に始められます。

BtoB企業においてメールマーケティングが適しているのは、普段の業務でメールを頻繁に活用していて、従業員が30人以上の営業組織を有しているような企業です。こうした企業がメールマーケティングをインサイドセールスやフィールドセールスなどに生かすことで、効果を最大化できます。

メールマーケティングの課題を解決する3つのポイント

冨樫氏:メールマーケティングで頻出する課題はいくつかあります。まず、顧客データベースとメール配信サービスの連携です。手動で顧客リストを連携させている場合、人為的なミスが発生しやすく、サービスの質が下がってクレームが増えたり、業務負荷が増えたりします。また、メールを受信した顧客の反応がデータベース上では把握できず、確認するのに手間がかかります。

筆前直輝氏(以下、筆前氏):顧客の状況は常に変わるため、最新情報に沿ったリスト精査が必要です。メールを送りっぱなしにしていると、効率的なセールス活動につなげることはできません。メールマーケティングを行う際に重要なポイントは「誰に」「いつ」「どんな内容で」の3つがあります。

画像:筆前直輝氏(サイボウズ株式会社 アライアンスビジネス開発部 部長)
筆前直輝氏(サイボウズ株式会社 アライアンスビジネス開発部 部長)

【誰に】最新の顧客リストを活用する

冨樫氏:「誰に」のポイントは、配信対象となる顧客リストの更新です。ターゲット外の顧客リストにメールを送っても反応されないどころか、配信解除につながり悪影響を与えます。特にtoBの場合、顧客の部署が変わったり退社していたり、すでに成約した顧客に購入促進のコンテンツを送ってしまうリスクがあります。

古いリストにメールを送り続けると信頼を失う可能性もあるため、営業と連携し、顧客リストを更新しなければなりません。顧客との新規接点を作っていくマーケティング担当者は、調査段階で得た情報を営業担当者に共有し、営業担当者は顧客の状況を把握してマーケティング担当者に共有する仕組みを構築するべきでしょう。

【いつ】メールを送るタイミングをターゲットに合わせる

冨樫氏:「いつ」のポイントは、相手が興味を持ったタイミングでメールを送ることです。 熱量があるタイミングでメールが届けば、記載されたURLのクリック率が上がります。きっかけは多い方がよく、メルマガなどの定期メールの解除リスクを鑑みても週に1回は配信して良いでしょう。

弊社が提供するメール配信サービス「配配メール」の場合は、ヒートマップのように、メールが開かれた時間を可視化する機能があります。toBなら平日何曜日の何時が良いのか、toCは週末の何時が良いのかといった情報を把握し、配信対象者のライフサイクルに合ったタイミングで配信することで、開封率やクリック率を引き上げられます。

【どんな内容で】1メール1テーマにして細分化していく

冨樫氏:「どんな内容で」のポイントは、1メール1テーマに絞り、コンテンツを盛り込み過ぎないことです。通常、スクロールまでしてメールの全文を読んでもらえるケースは少なく、ファーストビューで興味関心に合った情報が目に入ったり、キャッチーな内容で興味関心を持たせて初めて目を通してもらえます。コンテンツを盛り込み過ぎて文量が多いメールを送っても、上部のURLをクリックしてWebサイトに遷移したら、メールを最後まで読んでもらえないことがほとんどです。そのため、1メールにつき1つのテーマに絞ったほうが効率は良いと言えます。

ただ、あえて2種類のコンテンツを入れる方法もあります。 配信対象者がどちらかのコンテンツに興味を示したら、次回はそのコンテンツをさらに細分化したコンテンツを送付する、という流れを枝分かれするように繰り返していくことで、配信対象者の属性や興味の方向が可視化できます。こうして求められるコンテンツをピンポイントで届けられるようになれば、自社の配信メールが有益なコンテンツとして評価されます。

メールの開封率を上げる「タイトルのABテスト」

冨樫氏:タイトルはメールの開封率を大きく左右する要素です。メールの文面は同じでもタイトルだけを変えて何回か発信するだけで、メールの開封率が上がります。初回のメールを開いた人はリストから外し、それ以外の人に違うタイトルにしたメールを再送します。タイトルを変えてABテストを繰り返すことで、顧客が興味関心を抱きやすいワードが把握できるようになり、開封されやすいキャッチーなメールを制作できるようになりま

メールマーケティングに成功している企業の共通点

冨樫氏:メールマーケティングがうまくいっている企業の共通点は3つあり、1つ目は配信頻度です。成果をあげていない企業は月1~2回しか配信していないのですが、成果をあげている企業は、最低でも週1回は配信しています。メールは多少頻度が高くても見る側の負担になりにくいです。

2つ目は、メール作成に時間をかけないことです。あれもこれもと1つのメールに複数のコンテンツを詰め込むのではなく、1メール1テーマで複数回に分けて送っています。配信対象者の興味が絞れるうえに、業務負荷が減り高速でPDCAサイクルを回せるようになります。

3つ目は、配信対象者にとって有益なコンテンツを送っていること。サービス紹介一辺倒ではなく、お役立ち記事や資料、ときにはメディアが発信している業界ニュースなども盛り込んでいます。配信対象者の満足度が上がって解除率が下がりますし、反響も高くなります。

メールマーケティングのツール連携で実現すること

画像:冨樫嘉一氏(株式会社ラクス ラクスクラウド事業本部 配配メール事業部 営業2課 課長)【左】と 筆前 直輝氏(サイボウズ株式会社 アライアンスビジネス開発部 部長)

冨樫氏:弊社の「配配メール」はサイボウズのクラウドサービス「kintone」と連携していて※1、顧客情報をシームレスに連携することで手動作業の手間を削減し、業務効率化を実現します【下写真】 。さらに「配配メール」で配信した後の顧客のクリック、Web訪問などの動向は「kintone」の顧客管理、案件管理に反映されるため※2、取得したデータは分析や営業活動に生かせます。

「過去に問い合わせがあった人」「イベントに参加した人」など特定の条件に合致するリストの抽出が可能なため、「営業が最終アクションをしてから半年間ステータス更新されていない人」といった細かな条件設定をしてリストを作ることも可能です。こうしたリスト抽出で配信対象者の細分化ができるようになると、担当者の負担を軽減するだけでなく。顧客の意向に沿った情報提供がしやすくなります。

筆前氏:「kintone」では、Excelや紙などでバラバラに管理している顧客との接触履歴や案件ステータス、契約情報などを集約し、顧客データベースとして一元管理できます。さらにメール配信ツール「配配メール」と連携することによって、適切な配信対象者に適切なタイミングでメール配信することが可能です。こうしたツール連携により、リスト、タイミングの観点で精度を上げたメールマーケティングの運用が期待できます。

※1【プレスリリース】メールマーケティングサービス「配配メール」と業務改善プラットフォーム「kintone」のシステム連携を開始 顧客データの自動同期で、手間なくタイムリーなメール配信を実現(株式会社ラクス)

※2クリックやWeb訪問などの連携は2023年4月以降に順次開発予定。

メールマーケティングサービスにおける今後の展望

冨樫氏:メールマーケティングの担当者にとって、特に悩むのはコンテンツではないでしょうか。迷ったら、メールのポイントとして紹介した「何を送るか」の部分よりも先に、「いつ送るか」を優先して考えたほうが、メールマーケティングを進めやすくなると感じています。

メール送信のタイミングを分析して最適な時間帯に自動化したら、それによって浮いた人員と時間をコンテンツ作成などのクリエイティブ分野に費やすこともできるでしょう。ツールにより、クリエイティブなコンテンツ作成さえ自動化できる時代がやってくるかもしれません。

メールマーケティングはまだまだ可能性に溢れたマーケティングツールなので、ツールを活用しながら積極的に運用することをおすすめします。

画像:ラクス本社にて、ロゴ前に立つ冨樫嘉一氏(株式会社ラクス ラクスクラウド事業本部 配配メール事業部 営業2課 課長)【右】と 筆前 直輝氏(サイボウズ株式会社 アライアンスビジネス開発部 部長)

※情報は2023年2月21日取材時点

まとめ

  • メルマガはコストパフォーマンスが高いマーケティング手法
  • 効果を最大化させるポイントは「いつ」「誰に」「何を送るか」
  • 「1メール1テーマ」に絞ったほうが、読まれやすく効率的
  • タイトルのABテストにより、配信対象者の興味や動向を探っていく
  • 配信対象者のリストを最新の状態に更新し、分析を重ねて細分化する

【取材・執筆:小林良介、株式会社YOSCA、編集:BeMARKE編集部】

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