インタビュー
SEOはBtoBマーケティングで欠かせない要素の1つでありながら、手探り状態の企業が少なくありません。そんな中、「SEOおたく @seootaku」として、SNSでSEOの最新情報を発信し、2万人のフォロワーがいる株式会社LANYの竹内渓太氏が、初の著書『強いSEO SEOおたくが1,000のサイトを検証してわかった成果を上げるルール』を執筆しました。竹内氏に執筆のねらいと、SEOで悩むBeMARKE読者に向けて、明日から実践できる具体的なノウハウをお聞きしました。
株式会社LANY 代表取締役
1994年愛知県生まれ。2018年に株式会社リクルートホールディングスにデジタルマーケティング職で新卒入社。3年間デジタルマーケティングに従事。大規模サイトのSEOを中心に、デジタル広告運用やB2Bマーケティングなど多種多様な業務を経験。2020年、26歳で株式会社LANYを創業。Webメディア・サービスサイト・データベース型サイトなど幅広いモデルのSEO改善をプレイヤーとしてサポート。現在もプレイヤーとして多くの企業のSEOコンサルティングに取り組んでおり、「SEOおたく」の名前で2018年からSNSでノウハウを発信している。
――竹内さんのプロフィールと、これまでの歩みについて教えてください。
私のキャリアは、現場での実践とサイト分析を通じて築かれてきました。初期の頃から、SEOの本質を追究する中で、検索エンジンの仕組みやユーザー行動の変化に注目してきました。現在は、ブログやSNSを通じ、フォロワーに向けて最新のSEO施策や実践例を共有しています。
参考:竹内氏のSNSアカウント
竹内渓太: https://x.com/take_404
SEOおたく: https://x.com/seootaku
SEOおたくnote: https://note.com/seo_magazine/
――書籍『強いSEO』の執筆には、どのような思いが込められているのでしょうか?
執筆するに至った経緯として、大きく3つの理由があります。一つ目は、「書籍というマーケティング施策自体がどれだけ効果を生むのか」という好奇心からです。二つ目は、私たちのような設立から5年目の会社が、顧客に「信頼できる体系立ったナレッジ」を持っていることを示すため。そして三つ目は、7年間SEOに取り組む中で、体系的な知識が自分の中に蓄積され、これを「卒業論文」のような形でまとめたくなったからです。
今後はより広い意味での支援企業になりたいと考えていて、「SEOといえばLANY」の想起から「デジタルマーケティングといえばLANY」への転換を目指したいと思っています。つまり、「SEO会社」としてのノウハウはこのタイミングで書籍という形に集約して残したかったという背景もあります。
――書籍には、これまでのキャリアや企業支援の実務から得た学びが大きく反映されているとのことですが、具体的にはどのような点に気づかれたのでしょうか?
SEOは時代とともにやるべき施策やその詳細が大きく変わっていきます。5年前と10年前、そして現在では、具体的なテクニックも含めて全く別の競技に見えるほどです。しかし、根幹となる「考え方」は一貫しており、その考え方こそが、成果に結びつくための神髄だと感じています。
もし、現場での実践や解釈をともなわず、単なる知識だけで終わってしまえば、読者の皆さんにとって使い物にならない。だからこそ、この本では“実行できるエッセンス”を余すところなく伝えることにこだわりました。
――本のタイトルにある「強いSEO」とは、一体どのようなものなのか。竹内さんの考えをお聞かせください。
強いSEOとは、単に検索順位を上げるためだけの施策ではなく、「成果を出すための実行力」がともなっているSEOのことです。詳しくなれるのはもちろんですが、実際にその知識をもって周囲を巻き込み、実行に移し、結果を出すことが重要だと思っています。
つまり、SEOにおいては「詳しさ」と「実行力」の両輪が必要です。例えば、営業やプロダクト、広報など、他部門との連携を含めた組織全体の協力といった実行できる環境がなければ、どんなに理論を積み重ねても成果は上がりません。
――具体的に、1,000のサイトを分析する中で、強いSEOを実現できているサイトとはどのような特徴があるのですか?
成功しているサイトは、明確な「自社の強み」を十分に生かせている点が共通しています。例えば、どのサイトも狙うべきキーワードをしっかり選定し、そのキーワードに合わせたコンテンツ作りを徹底している。さらに、内部リンクの最適化や、ページ表示速度、モバイル対応などの技術的側面も抜かりなく対策されており、全体としてバランスが取れているのが特徴です。
ここで重要なのは、そうしたサイトをどうやって作り出すか、です。短期間で結果が出るものではないため、半年、1年という長期的な視点で取り組む企業の姿勢こそが成果を左右しますが、今でもSEOを魔法のように思っている企業もいらっしゃいます。泥臭いというか愚直にやらなければいけないことがあるのだと、経営者も含めた全社的な認識をそろえた上で、腰を据えて取り組むことが大切です。
――単に知識として覚えるだけではなく、実行に移す覚悟や、時間をかけた継続的な努力が必要なのかが分かりました。そうしますと、逆に失敗する企業はそうした短期的な成果ばかりを追い求める傾向があるということでしょうか。
SEOに限らないですが、BtoBの場合、他社が成功しているからといって、そのまま同じ施策を模倣するのは大きな失敗につながります。
SFAプロダクトのケースで考えてみましょう。それぞれの企業には独自の強みがあります。しかし、競合他社と同じキーワードやコンテンツ構成をそのままマネしても、自社の特徴が伝わらず、リード獲得に結びつかない。さらに、マーケティング部門だけで完結しようとすると、実際の顧客ニーズや現場が推したいプロダクトの機能についての現場感覚が欠如し、結果として、どの記事がどのターゲットに刺さるのかを見誤るリスクがあります。
実際、成功しているBtoBのオウンドメディアでは、営業やプロダクト、さらにはカスタマーサクセスはもちろんのこと、中には法務や弁護士が入っているような企業もいるほどです。他部門と連携しながら、ターゲットが抱える課題やニーズを的確にとらえたコンテンツ作りがなされていますね。
――少し話がそれてしまいますが、そうしたお話を聞くと営業とマーケがそもそも分断されているような企業はSEOがうまくいっていないのは理解できます。ただ、営業の方が協力的な姿勢を示してくれたとしても、例えばマーケ側の懸念としてはSEOに全く知識のない営業の方にどう声がけをすれば良いのか、があります。
あまり難しく考えずに、キーワード選定が目的なら、営業の方に「いつもお客さんとの商談でよく出てくる言葉とかよく出てくる悩みって何ですか?」といった感じで1時間だけ押さえてヒアリングするのでも良いと思いますよ。そこでヒアリングしたキーワードや悩みなんかをコンテンツに使うようなやり方が一番成功するパターンかなと思っています。
――確かにそのような協力の仕方をしてほしいと言われたら、営業の方も「SEOー」と言われるよりも、自分たちにできることだと認識して協力的になりそうですね。ついでにお聞きしたいですが、営業とマーケがうまく持続的に連携できている企業はどのような取り組みをしていますか?
一つは普通に感謝することです。マーケが行っていることは結局のところ、良いリードを作って営業にパスして営業が決めてくるっていう流れだとすれば、良いリードが入ってきたときには営業がマーケにきちんと感謝を伝える。営業がそこで結果を出してくれたらマーケは営業に感謝を伝える。そして会社がその結果をきちんと営業とマーケ双方の評価として案分することです。
余談ですが、こうした取り組みができている会社は、先ほどの1時間のヒアリングの中で、営業側から「今、こういう業界、業種を攻めたくて、こういうリードが欲しいんだけどとれないか」といったことも会話の中で聞き取れていると思うんですね。だから、質の良いコンテンツが作り出せる。
――BtoB企業が実際に取り組むべきSEO戦略や実践について、書籍でかなり詳細に書かれています。戦略については、BtoB企業が失敗するケースの1つとして、「検索順位の1位を目指す」の捉え方について誤解してしまっている部分があるなというのが、あらためて納得できました。
“自分の土俵”の1位を目指すのが大事であって、おそらく自分の土俵を見つけられなかったり、見間違う人が失敗しやすいですね。競合が多く存在しマーケットがある(大きい)ところをどうしても狙ってしまいがちですが、そこで実際に勝つのは難しい。本来狙うべきは、マーケットがある、要するに検索ボリュームがある領域という部分では間違いないのですが、そこで、「自社の強みが生きる、でも競合はできない」というキーワードがあるかどうか。そこがSEOにおける大きな伸びしろの部分になります。
LANYの例で言うと、「データベース型のポータルサイト」という独自の強みを持っており、その強みを生かしたキーワードで1位を獲得し、問い合わせを集めています。
参考:LANYが実際に作成しているコンテンツ例
【データベース型サイト】のSEOで意識すべき3つのポイントと改善事例|LANY
――先ほどの話を受けると、そうしたキーワードは営業現場に存在するのでしょうか。
現場だとは思いますが、なかなか難しいですね。マーケ担当者が丁寧に営業へヒアリングする中で、最終的にマーケットの検索ボリュームと鑑みて言語化、キーワード化する必要があります。それこそがマーケターの役割ではないでしょうか。
――もう1つ、戦略うんぬんの前に、そもそもSEOで成功しない企業のケースとしてはどのようなことが考えられますか?
成功しないとまでは言いませんが、もうトップオブトップのプレイヤーが多数いるような領域は、SEOで参入するにも「戦うフィールドをずらして勝負しましょう」と言います。また、例えば製造業でとてもニッチなプロダクトを作っていて、日本にターゲットが1,000社以下しかいないようなときは、SEOではなくDMや架電など直接的な営業で良いのではという話をすることもあります。
1.【キーワード選定】
・自社の強みや市場での差別化ポイントを明確にし、それに合ったキーワードを抽出。
・現場の担当者や営業からのヒアリングを通じ、実際に顧客が使っている言葉や、悩みの言葉を反映させる。
2.【コンテンツ作成】
・選定したキーワードに合わせ、検索意図を網羅した独自性の高いコンテンツを作成。
・ただ記事を量産するのではなく、誰でも作れるような平凡なコンテンツではなく、自社ならではの専門性を前面に出した内容を心がける。
3.【内部リンクの最適化・技術的対策】
・コンテンツ同士の内部リンクを整理し、ユーザーがスムーズに情報を得られる構造を作る。
・サイトの表示速度、モバイル対応、エラーの解消など、技術面での最適化も並行して実施する。
4.【DCAサイクルの実行】
・作成したコンテンツが実際にどのようにリードにつながっているかを定期的に分析。
・具体的には、どのページからリードが発生しているのか、リード獲得数を細かくチェックし、必要に応じてリライトや内部リンクの追加などの改善を加える。
※この一連のプロセス、正しいことを大量に、そしてできるだけ早く実行する。
※書籍以外に、竹内氏が紹介してくれた参考情報
――BtoB企業のマーケティング担当者が、明日からでも実践できる具体的なアクションプランについてお聞かせください。
まず、BtoB企業のSEOで押さえておきたいチェックポイントとしては、以下の5点を挙げています。
自社の強みが反映された、競合が簡単には取れないニッチなキーワードを選定しているか確認する。
記事が誰でも作れる平凡なものではなく、自社の専門性や独自のノウハウがしっかり伝わっているかどうかをチェックする。
どの記事からリードが発生しているかを定期的に分析し、関連コンテンツ同士を適切につなぐことで、ユーザーのサイト内回遊を促進する。
ページ表示速度、モバイル対応、エラーの有無など、ユーザー体験に直結する技術的側面がしっかり整備されているか確認する。
作成したコンテンツや施策がどの程度リード獲得に結びついているか、数値データをもとに改善点を明確にし、継続的にPDCAを回す。
さらに、具体的に即実行できる3つの施策としては、次の通りです。
過去のコンテンツを見直し、狙うキーワードや自社の強みが伝わる内容に再構築する。例えば、タイトルタグやmetaディスクリプションの改善、内部リンクの再配置を行う。
現場の営業担当者と協力し、顧客との商談で出てくる実際の言葉をヒアリングし、そこからビジネスにつながるキーワードを洗い出す。
短期的に成果が見えやすい施策をまず実施し、その結果を社内で共有する。例えば、タイトル変更後の1週間後に順位が上がるなど、小さな成功を積み重ねることで、社内全体の協力体制を作る。
――最後の「小さな成功体験の積み重ねと社内共有」は、長期的な取り組みを可能にするために必要な、社内の地固めといったところでしょうか。
おっしゃる通りです。社内の協力を取り付け、長期的に腰を据えて取り組むためにも、「本当にSEOは効果があるのか」を実感してもらうことは重要です。
――今後、AIや検索エンジンのアルゴリズム変化によりSEOのトレンドの影響と変化はどのようになっていくと予測していますか。
やはり生成AIで欲しい情報が得られるようになっていくのはもう不可逆というかトレンドになるでしょう。そのため、情報探索型のキーワードは検索エンジンで検索するのではなく、「AIに聞く」状態になるのではと想像します。ECサイトでいう購入や予約といった「何か行動を起こしたい人」は検索エンジン、「知りたい」だけの人はAIといった棲み分けができていくイメージです。
そうした場合、行動を起こしたい方のキーワードが結局は利益に直結するため、企業のSEO担当者やSEOの支援会社は、戦略としてECサイトとか、メディアの中でもリード獲得メディアの方にどんどんシフトしていく可能性があるとは思っています。そうなると、ソリューション提供型の「とは?」モノのコンテンツは、あまり評価されなくなるというか、いらなくなるかもしれません。購買者の行動を予測したコンテンツをどれだけつくれるかが問われてきます。
――オウンドメディアの担当者がAIを活用してSEOコンテンツを作るにしてもひと工夫が求められますね。
AIを使ってコンテンツを作れるようにはなりますが、誰でも80点90点までは取れるようになって、AIでは取り切れない残りの10点の部分での勝負になると思っています。そこは人間がやるべきところとか、人間がやる方法の話になりますが、自社にしかない情報を提供したり自社の専門家の頭の中にしかない、つまりAIではアクセスできないところにあるものを出して勝負する。残りの10点のうちの1点を取り切れるかどうかは、私たちのような支援会社が生き残れるかどうかの話にもなってきますね。
――BtoB企業の担当者でも、その1点を取るためにできることはないでしょうか?
「SEO以外のことをやる」ですね。SEOライティングとかHTMLの構造とかそういうものはAIでもできるし、ワードプレスも活用できる。それでも残りの10点は取れないと思っています。例えばドメインを強くしようとして、広報PR活動を通じてメディア経由の被リンクを獲得したり、SEO記事の評価を上げるためにYouTube動画を作って情報提供できるようにしたりと、SEOは当たり前にやり切った上でSEO以外のことをやるというのが残りの10点につながっていくと思いますし、今後のSEOのトレンドにもなってくるのではと、予想します。
――最後に、どのような方に書籍を手に取ってほしいですか?
この本は、SEOに詳しくなれるだけではなく、「実行して成果につながる」ところまでを大事にして書きました。SEOと言っても、メディア、ECサイト、BtoB企業のサービスサイトなど同じSEOと呼ばれているものでも、実際は全く違う競技です。それぞれに求められる戦略、戦術の違いをだいぶ細かく説明しています。そうした本はこれまでなかったと思います【上写真】。自分が担当しているSEOのタイプに合わせてじっくり読んでいただき、実行してぜひ成果を出していただきたいですね。
――ありがとうございました。
同書は、SEOコンサルティングをはじめとした幅広いデジタルマーケティングを提供する株式会社LANYの代表であり、SEOの最新情報を発信する「SEOおたく」の中の人でも竹内渓太氏が、自身の実績と経験から導いたノウハウを余すことなく伝える本です。
竹内氏は新卒で入社した事業会社で3年間SEO業務にあたり、起業後は、クライアントのSEOコンサルティングの業務を4年間担当。事業会社と支援会社、双方の立場で1,000を超えるwebサイトのSEOを分析してきた経験に基づき、現場で本当に使える知識を発信し続けてきました。
SEOの基本知識がすでにある方でも、実案件で成果を上げるまでに大きな壁があるものです。 同書では、基本知識を前提としながら、実案件に結果を出すための戦略や戦術の立て方を、webサイトのタイプ別・手法別の切り口で、再現性の高いノウハウとして解説しています。
”SEOについてなんとなくわかっているけど、自分のwebサイト改善の方法がわからない人”や、”SEOの全体感はわかっているものの、具体的に何をしたらいいのかがわからない人”に向けて、正しいSEOの戦略や戦略や戦術の立て方を理解してもらい、読んだ後すぐに自分の担当サイトのSEO改善ができる実践的な内容です。
出版社 : エムディエヌコーポレーション (MdN)
発売日 : 2024/11/1
単行本(ソフトカバー) : 224ページ
定価 : 2,200円
ISBN-13 : 978-4295207214
https://books.mdn.co.jp/books/3224303024/
竹内渓太(たけうち けいた)
株式会社LANY 代表取締役。1994年愛知県生まれ。
山梨県立韮崎高校ではサッカー部に所属しインターハイ山梨県予選準優勝、インターハイ山梨県予選優秀選手賞受賞。愛知県立大学外国語学部英米学科を卒業後、2018年に株式会社リクルートホールディングスにデジタルマーケティング職で新卒入社。3年間デジタルマーケティングに従事。大規模サイトのSEOを中心に、デジタル広告運用やB2Bマーケティングなど多種多様な業務を経験。
2020年、26歳の時に株式会社LANYを創業。Webメディア・サービスサイト・データベース型サイトなど幅広いモデルのSEO改善をプレイヤーとしてサポート。現在もプレイヤーとして多くの企業のSEOコンサルティングに取り組んでいる。
「SEOおたく」の名前で2018年からSNSでノウハウを発信。現在Xのフォロワーは約2万人。
●SNSアカウント/会社HP
竹内渓太: https://x.com/take_404
SEOおたく: https://x.com/seootaku
SEOおたくnote: https://note.com/seo_magazine/
株式会社LANY:https://lany.co.jp/
参照:2万人フォロワーの”SEOおたく” 竹内渓太 初の著書『強いSEO SEOおたくが1000のサイトを検証してわかった成果を上げるルール』(MdN)予約発売中|NEWS CAST