インタビュー

指名検索数30倍に。記事広告で「電話代行」の潜在ニーズを顕在化し、認知拡大へ

指名検索数30倍に。記事広告で「電話代行」の潜在ニーズを顕在化し、認知拡大へ

株式会社うるるは、BPO事業、クラウドソーシングプラットフォーム事業、SaaS事業の3つを軸に事業運営しています。SaaS事業では、2019年2月より、月1万円から利用できる電話の一次受付サービス「fondesk」の提供をスタート。ITスタートアップを中心に広く導入を進めています。

電話代行の検索ニーズがなく知名度も低いという課題に対して、同社が実行した解決策が「記事広告」です。月間指名検索数を30倍にまで伸ばし、クライアントの9割を商談なしで契約に結び付ける成果を出した同社。fondesk事業の責任者である脇村瞬太氏に、どのようにして課題を解決したのか、マーケティング戦略も含めてうかがいました。

課題 解決策
ターゲットの認知、興味関心の不足(ニーズ顕在化) 記事広告

目次

「電話代行」の潜在的ニーズを、記事広告で顕在化させた

画像:株式会社うるるのfondesk事業責任者・脇村瞬太氏
fondesk事業の責任者・脇村瞬太氏

「fondesk」自体は2019年2月からスタートした新しいサービスですが、電話代行自体は昔から存在していました。電話対応は相手のタイミングに合わせて対応しなければならず、人手も必要になりますから、電話代行の潜在的ニーズはもともとあるんです。

しかしながら「どの会社でも当たり前に電話に出ているのに、なぜわざわざアウトソーシングする必要があるのか?」がピンとこないため、ニーズが顕在化しておらず、電話代行の利用は一般的ではありませんでした。サービスリリース当時、「電話代行」というキーワードの検索回数は月1,000~2,000回程度しかありませんでした。

検索されないとなると、リスティング広告などで顧客獲得するのは難しいです。リモートワークが普及してさらに需要が高まっているのは明らかで、ターゲットの認知・興味関心をつくる手段として記事広告の活用を検討しました。+

▼fondesk  https://www.fondesk.jp/

画像:電話受付の代行サービス「fondesk(フォンデスク)」(株式会社うるる)

一般的な電話代行は、サービスを利用する企業の社員と同じように取次から具体的な返答や連絡といった一連対応を含むサービスであることに対して、fondeskは社員の代わりに電話を受け、SlackやChatworkなどのツールを使って担当社員宛てに受電内容をお知らせする一次対応に特化した取次サービスです。

経費精算システムなどだれでも理解できるサービスであれば認知に広告費を割く必要はありませんが、「fondesk」はサービス内容や必要性も含めた認知活動に注力しなければならないこともあり、ターゲットの認知と興味関心をつくりながら具体的な活用シーンもイメージしてもらうために、記事広告が適していると考えました。

記事広告で実現したかったことは、指名検索数の増加、ひいては契約数の最大化です。認知施策の目標を、最初から契約数にするとハードルが高くうまくいかないので、KPIは指名検索数として、あえて契約数は追わないようにしました。経営メンバーにも共有して「長い目で見ていてください」という温度感で進めています。記事広告は成果が出るまで時間がかかるので、経営メンバーとも目線合わせをしておくのが重要です。

記事広告の掲載先は「読者が自分ごと化できるか」で選ぶ

自社の強みがメリットになる企業が読む媒体

「fondesk」の強みは、SlackやChatworkなどのチャットツールに簡単に連携できることです。Chatworkの電話代行サービスがすでにヒットしていたので、いつものチャットで電話の報告を受け取れるニーズが高いことはすでに分かっていました。

そのため、記事広告の掲載先には、社内業務でチャットを活用しているような企業が見る媒体を選びました。Chatworkの電話代行を使っている企業の業種群から絞り、「LIGブログ」「R25」「NewsPicks」などにどんどん出稿していき、全体的に想定以上の反響がありました。

ターゲットが仕事の情報源にしている媒体

受注を目的にした記事広告を実施する場合、記事読者が課題を自分ごと化してもらうことが重要です。「自社で利用検討できるサービスだ」と認識されないと検討してもらえないので、ターゲットが仕事の情報源として読んでいる媒体に掲載するのが効果的です。

最初に選んだ媒体は、ITスタートアップ企業からの支持が厚く、効果的にリーチできる「LIGブログ」でした。大手ビジネスメディアと比較して、記事広告の価格帯がリーズナブルで「失敗してもしょうがない」という感覚でトライできました。結果的には100件以上の契約が取れて、かなりコストパフォーマンスが高かったです【下図参照】

グラフ:fondesk指名検索の伸び(株式会社うるる)
fondesk指名検索の伸び
グラフ:LIGブログ経由の契約件数推移(株式会社うるる)
LIGブログ経由の契約件数推移

出典:指名検索数が1年で30倍!? fondesk流記事広告マーケティングの極意(note)より

LIGブログで展開した記事広告のタイトルは【スタートアップに朗報!業務効率化に有効な電話代行サービス「fondesk」がシンプルだけどすごかった】です。記事内では、電話対応でよくある悩みについてアンケートデータを交えて紹介し、解決策として「fondesk」を取り上げています。
参考:実際の記事広告 liginc.co.jp/461596

成功要因は「口出しせず、媒体社の色に委ねる」こと

画像:株式会社うるるのfondesk事業責任者・脇村瞬太氏

読者を一番理解しているのは媒体社

記事広告は基本的に口を出さず、読者を一番理解している媒体社にお任せしています。クライアント側が自分たちの好き嫌いを重視して細かく口を出すと、読者が「おもしろい」と感じる記事から離れてしまい、広告価値が落ちるからです。

100件以上の契約が取れた「LIGブログ」の記事広告も、ほぼおまかせです。最初に先方から「“〇〇を使ってみた”みたいな企画にしようと思っています」と言われ、1回目の原稿がほぼ完成品に近い状態で上がってきました。期待通りの仕上がりだったのでほぼ手直ししていません。

特徴や魅力を理解している媒体に出稿する

注意すべきは、自分自身が依頼する媒体の色を理解することです。編集方針などを理解したうえで依頼すれば、認識違いによるすれ違いが起きなくなり、媒体社側の制作意図を理解して、納品された記事広告に納得できます。

我々は「おもしろい記事広告を作りたい」と思っていたから「LIGブログ」がマッチしましたが、すべてのベンダーが「おもしろさ」を求めているわけではありません。きっちりした固い記事を求めている企業にとっては「真面目さ」が合う場合もあります。単に「有名な媒体だから」といった理由で選定せず、自分が魅力を知っている媒体を選ぶことをおすすめします。

ターゲットが想起する「上位3ブランド」に入るためのマーケティング戦略

fondeskのマーケティング戦略においては、「想起集合(Evoked Set)」の考え方を重要視しています。想起集合とは、何かを買おうと思ったときにイメージする「購入検討しても良いと考えるブランドの集合体」のことです。

実際にイメージするブランドの数は3ブランドくらいで、その中から買う人がほとんどです。経費精算システムを検討するとしたら、多くの人は「マネーフォワード」「freee」「弥生会計」あたりの有名どころを思い出し、これらに問い合わせして比較検討します。

選ばれるには「その人の脳内にインプットされている状態」になるのが重要で、まだ知名度がないサービスであっても「マインドシェアを取るためにどうしたら良いのか」、つまり「ターゲットに対して好意的なブランドとして認知・理解してもらうために何をすべきか」を考えて戦えば勝算があります。それでターゲットに思い出してもらえる3ブランドの中に入れば良いのです。

マーケティングの知識をゴリゴリ勉強するよりも、クライアントとなるターゲットが「どんなブランドを好きか」「どうやって情報を探すのか」という意識や行動を観察して理解するのが大事なので、たくさんユーザーヒアリングや事例取材の機会をつくるのが良いと思います。

記事広告は長期的に展開し、複数の切り口を持つ

記事広告は単発で実施しても一時的な成果しか見込めません。どんな媒体でも、記事をすべて読んでくれる読者はいなくて、大体の読者は最新の記事をいくつか読み、それがおもしろければ関連記事を2~3記事読むくらいでしょう。持続的に成果を出すには、出稿する側も「別の媒体で何度も出すのか」「同じ媒体で何回か継続して出すか」など長期的なプランを立て、計画的にマーケティング活動をしていく必要があります。

3カ月単位や半年単位で効果検証をして改善する習慣を作らないと、短期の成果だけを見て「あまり成果が出ていない」と判断しがちです。成果計測にあたっては、商談受注率など直接的な契約数以外の成果も複合的に見て判断すれば、過小評価に陥らずに正しく記事広告の成果を振り返ることができます。

記事広告を複数展開するにあたっては、エンジニア目線だったり総務目線だったりと複数の切り口・メッセージで記事を展開することで認知を広げやすくなります。そのうえで媒体の読者層に合わせて「ITベンチャー向け」「20代向け」というように内容を調整していくと、記事広告の効果を高められます。

記事広告が届かないターゲットにもアプローチする方法を模索していく

こうして3カ月に1回くらいのペースで記事広告を出稿したことで、検索結果に残る質の高い記事が蓄積でき、指名検索数が増加しました。リリース当初は1日10~20件でしたが、現時点では月4,000~5,000件くらいの指名検索があります。

「fondesk」の利用者の裾野が広がっているので、今後は今までメインターゲットではなかった層の獲得に力を入れ、さらなる事業成長にチャレンジしていきます。同時にターゲットとなるユーザーの興味関心と紐付け、検討の土台に上がるようなアプローチを模索していきたいですね。

現状の課題として記事広告で検討する企業の母数は増やせていますが、9割のクライアントとは商談もせず導入に至っていて、汗をかいて営業した経験が多くありません。順調ではあるものの、桁違いの爆発的な成長は継続できていないですし、関東圏の認知も数パーセントに留まっているのが課題です。記事広告が届かない業種やエリアのターゲットにどうアプローチするか、マーケティング施策を模索していきます。
※情報は2022年12月26日取材時点

株式会社うるるの課題解決策:記事広告(提供・株式会社LIG)

悩みへの共感、サービス導入の手軽さを表現

脇村さんのお話にもあったように、最初に電話代行サービスのニーズを顕在化させたいというご相談をいただいていたので、記事の冒頭で電話対応に関する世間の悩みを浮き彫りにし、ターゲットである読者に対して共感を促す構成をご提案させていただきました。

また、記事制作にあたって実際にfondeskを利用した際、導入の手軽さやシンプルさがこのサービスの魅力だと感じたので、それらを記事でしっかり表現することを意識しました。電話代行というと大規模な工事をイメージされる方もいらっしゃいますが、利用開始までの手順を、キャプチャを交えつつLIGらしいフランクさで紹介することで、導入に対するハードルの低さを実感していただける記事になったかと思います(株式会社LIG)。

記事広告:スタートアップに朗報!業務効率化に有効な電話代行サービス「fondesk」がシンプルだけど凄かった

まとめ

  • 検索ニーズを高めるため、記事広告を複数媒体で展開
  • 利用シーンを具体的に説明しつつ、「電話代行」そのもののメリットから認知をつくる
  • 記事広告の内容は掲載媒体におおよそまかせて、あまり口出しをしない
  • ターゲットが購入検討する上位3ブランドに入ることを目指す
  • 記事広告は長期的なマーケティング戦略を立て、契約数以外の成果も定期的に振り返る

【取材・編集:BeMARKE編集部、執筆:秋カヲリ】

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